奈津の蔵

読了。
夏子の酒でも涙したが、奈津の蔵では一層に。泣かせ話などではない。人間が描かれているだけだ。命、糧、勤、銭、性……そして、幸。今日の夕飯は格別に旨かった。自然と、「頂きます」「ご馳走様」を口にしていた。まだ味がわかる、食べて行ける、家族がいる、想いを寄せる人がいる、……なんて幸せなことだろう。泣きながら、涙も一緒に飲んでしまった。
いつもの憂鬱と、不安と焦燥が嘘のようだ。私の心はこんなにも恵まれていたのか……。私はもらっているばかりで、まだ何もできていない。これから、つとめて行くのだ。