鋭利

私が鋭利なもの、特に包丁が怖いのは、幼い頃、母が錆びた包丁で父を脅している姿が焼きついているからです。
今でも時々夢に見ます。どうして喧嘩になっていたのかは理解していません。母に訊くと、「ははは、あれは冗談だよ」と言います。でも、父は本気で怖がって、縮こまって、ふるえていました。
私は父の死で泣けない。おそらく、母の死でも。そういう冷たい……